狐の嫁入り

昼休みの終わり頃、いつも通り日向ぼっこのために外に出る。東の空は快晴なのに、西の空は真っ黒な雲でいっぱいだった。

Twitterを開くと、西のほうはすでに雷雨に見舞われているツイートがちらほら。そういえば今日の天気予報は午後から雨マークが付いていたことを思い出す。頭上はちょうど空と雨雲の境目で、珍しい景色だったので少し興奮した。

雷雨に見舞われている人たちを高みから見下ろす気分で日向ぼっこしていたが、仕事に戻って少し経ったころにはこっちにもすごい嵐がきた。施設からガラスの壁ごしに見えるステージでは、これから始まる韓流スターのライブの準備が進んでいたのだが、突風と雨が一気に来たから何もかもめちゃくちゃだ。とりあえず観客は建物に避難、にわかに賑々しくなる館内と、通り過ぎるお客も外を眺めつつ、どこか浮かれた顔。こんなふうに突然起こる一体感は好きだ。強風強雨のステージでは、斜めになりつつ必死にスピーカーへビニールを被せたり、倒壊しそうなテントを畳んだり、CDの入った山積みのダンボールが濡れぬように、急いで台車に積むスタッフたち。あらまー大変大変と、僕は二階のブリッジから見物(実際に高みから見下ろす)。

急な雷雨は、たいていすぐに去るものだ。十分も経たぬうちに雨雲はすっかり消えて、元通りの晴天。でも雨はまだ降っている。狐の嫁入りだ。

天窓から差し込む光は、ガラスに打ち付ける雨粒の模様を僕の立っている床に映していて、水族館にいるようで綺麗だった。しばらく見上げて眺めていると、通りかかった人たちも床の模様に気づいて天窓を見上げていた。

もしかしたら外には虹が出てるかもしれないけど、こっちの景色が好きだなと思った。